誰もが知っているように、すべての創造行為で最後に問われるのは、つくる能力より、むしろ「感じる能力」です。音楽において決定的な力は、演奏する力ではなく聴く力だし、写真においては見る力です。環境問題も、環境そのものの問題というより、環境と自分の関係性をめぐる、感受性の問題ですよね。
人が真にクリエイティブであるためには、「生きている世界」をビビッドに感じつづけていることが、まず何よりも必要だと思います。ほおっておくと、つい当たり前な出来事の積み重ねとなって精細を欠いてしまう日常生活を、いきいきとした新鮮な世界経験に転化していく仕掛けが、いたるところに必要だと思うのです。
私ははじめてインターネットに触れた時、ものすごく感動しました。どんなページよりも、インターネットという大きな仕組みそのものに感激したのです。「これこそデザインだ!」と思った。デザインとは色や形ではなく、人の世界観を拡げる仕事でしょう?
ソフトウェアが、環境と自分の関係性をめぐる感受性を豊かにし、人の世界観を拡げることできるのではないか。そうすれば、より豊かに環境との相互作用を深めることができるのはないか。
だからこそ、ITアーキテクトがデザインするのはソフトウェアではないのです。われわれがデザインすべきなのは人と環境がインタラクションする総体、豊かなコミュニケーションの総体なのです。